🇮🇹 1750–1803

ジュゼッペ・ピネッティ

Giovanni Giuseppe Pinetti(仏名 Chevalier Joseph Pinetti)

ジュゼッペ・ピネッティの肖像
ジュゼッペ・ピネッティの肖像Henry Ridgely Evans による図版 / Public domain / 出典

ロベール゠ウーダンより半世紀早く、奇術を宮廷の芸に引き上げた18世紀最大の演者。

生
1750
没
1803
国・拠点
イタリア/フランスほかで活躍
時代
市と宮廷の時代
ジャンル
ステージマジック ・イリュージョン

ロベール゠ウーダンが「近代奇術の父」と呼ばれるより半世紀前、すでにヨーロッパ中に名を知られた奇術師がいた。ジュゼッペ・ピネッティである。彼の時代、奇術師には劇場という居場所がまだなかった。

主な功績

  1. 18世紀ヨーロッパでもっとも名声を得た奇術師とされる
  2. ルイ16世の宮廷で演じた
  3. 奇術に関する著作を残し、後世に影響を与えた
  4. 奇術を見世物から、劇場で成立する芸へと引き上げた先駆者と評価されている
  5. 法律家アンリ・ドクレンプスが1784年に『白魔術の暴露』を著し、彼の演目の解説を試みた。両者には長年の対立があり、その解説の多くは推測に基づくものだったとされる

劇場がなかった時代

ピネッティは1750年、イタリアに生まれた。フランスでは「シュヴァリエ・ジョゼフ・ピネッティ」と呼ばれている。

彼が生きた18世紀には、奇術師のための劇場というものがまだなかった。演じる場所は大きく二つである。市(いち)の小屋掛けか、王侯貴族の館か。 群衆を相手にするか、宮廷を相手にするか。その中間にある「切符を買って観に来る観客」という存在が、まだ生まれていなかった。

そのなかでピネッティは、ルイ16世の宮廷で演じた。 当時の奇術師が到達しうる最上の場所である。

「18世紀最大の奇術師」

彼は18世紀ヨーロッパでもっとも名声を得た奇術師とされている。

そして重要なのは、彼が奇術を見世物から、劇場で成立する芸へと引き上げた先駆者と評価されていることである。この評価は、ロベール゠ウーダンに与えられているものと本質的に同じ性質のものだ。

つまり「奇術を芸術にした」という功績は、一人の人物が一度で成し遂げたことではない。ピネッティが宮廷で地位を得て、その半世紀後にロベール゠ウーダンがパリに劇場を持った。段階を踏んで起きたことなのである。

彼は奇術に関する著作も残しており、それが後世に影響を与えている。

1784年、暴露本

ピネッティの名は、彼を攻撃した本によっても記録に残った。

1784年、アンリ・ドクレンプスという法律家が『La Magie blanche dévoilée(白魔術の暴露)』を刊行する。ピネッティの演目をすべて解説すると称した本だった。

ただし事情がある。ドクレンプスとピネッティのあいだには長年の対立があった。そしてドクレンプスはアマチュアの奇術愛好家であり、その「解説」の多くは推測に基づくものだったとされている。

種明かし本というものは、マジックの歴史とほぼ同じだけ古い。そしてこの一件が示すのは、暴露する側が必ずしも正解を知っているとは限らないという事実である。それでも本は売れ、話題になった。

当名鑑では種明かしを扱わない方針をとっているが、その方針が有効かどうかを考えるうえで、240年前のこの出来事は示唆に富んでいる。ピネッティの名は消えず、彼を暴こうとした本もまた、彼の名とともに記録された。

没年について

彼は1803年頃に世を去ったとされる。没年については資料によって記述が異なる。 当名鑑では確定できないものを断定しない方針をとっているため、この点は幅を持たせて記す。

18世紀の演者について残されている記録は、19世紀以降に比べればはるかに乏しい。それでも名前と、宮廷で演じたという事実と、彼を攻撃した本の存在は残った。

記録が薄いことは、その人が小さかったことを意味しない。

代表的な演目・著作

  • ルイ16世の宮廷での公演
  • 奇術に関する著作

年表

確認できた年のみを記載しています。

  1. 1750 イタリアに生まれる
  2. 1784 アンリ・ドクレンプスが『白魔術の暴露』を刊行し、ピネッティの演目の解説を試みる
  3. 1803 この頃に死去(没年は資料により異なる)

親子で観るときの注目ポイント

  • いま当たり前にある「劇場でマジックを観る」という形が、いつからあるのかを考えてみてください
  • 種明かし本は昔から存在しました。それでも芸が消えなかったのはなぜか、想像してみてください
  • お子さんには「250年前にもマジシャンがいたんだよ」と伝えると、歴史の長さが伝わります

このサイトでは種明かしをしません

マジックのタネや仕掛けの解説は一切掲載していません。知らないまま驚けることこそが、この芸のいちばんの価値だと考えているからです。

公式リンク

  1. Magicpedia(英語)

出典

このページの生没年と実績は、以下の資料で確認しています。

  1. Joseph Pinetti Wikipedia(英語版)
  2. Chevalier Giuseppe Pinetti Magicpedia(Genii Magazine)
  3. Legends of Legerdemain: Professor Pinetti The Ruse Letter
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