🇺🇸 1869–1936

ハワード・サーストン

Howard Thurston

ハワード・サーストンの公演ポスター(ストロブリッジ・リソ社)
ハワード・サーストンの公演ポスター(ストロブリッジ・リソ社)Strobridge Litho. Co./米国議会図書館 (cph.3g12758) / Public domain / 出典

一夜を通しての大型ショーを完成させた、巡業イリュージョンの頂点。

生
1869-07-20
没
1936-04-13
国・拠点
アメリカ
時代
マジックの黄金時代
ジャンル
ステージマジック ・イリュージョン

一晩まるごとをマジック一本で持たせる。それも数百人規模の劇場で、全米を回りながら何年も。サーストンがやっていたのはそういう仕事である。マジックが最も大きかった時代の、いちばん大きな存在だった。

主な功績

  1. ハリー・ケラーから公に後継者として指名され、アメリカ最大の巡業ショーを引き継いだ
  2. 貨車数両分の舞台装置を運ぶ大規模な公演を、全米で長年にわたり続けた
  3. 同時代のフーディーニと並び称される存在で、両者の関係は研究書の題材にもなっている

家出した少年

サーストンは1869年7月20日、オハイオ州コロンバスに生まれた。

彼の出発点は、恵まれた環境ではない。子どもの頃に家を出てサーカスに加わっている。そしてこのサーカスには、のちに彼の運命を決めることになるハリー・ケラーもまた出演していた。二人の道は、こんなに早い時点で一度交わっていたのである。

若い頃、彼はアレクサンダー・ハーマンの公演を観て強い衝撃を受け、この人物に並ぶ演者になろうと決意したと伝えられている。ハーマンは当時のアメリカにおける奇術師の頂点だった。

「カードの王」

サーストンが最初に名を成したのは、大型のイリュージョンではなくカードだった。

彼はカード演技の名手として頭角を現し、「カードの王(The King of Cards)」という呼び名を得る。手のなかで完結する、もっとも小さな種類の演目である。

ここは彼を理解するうえで重要な点だろう。のちに貨車8両を要する巨大ショーを率いることになる人物が、出発点では手のひらの上で勝負していた。大きな舞台を回せる人が、細かい技術を持っていないわけではない。

世界巡業、そして帰国

1904年から1907年にかけて、サーストンは一夜通しの公演を携えて世界を巡業した。カード一本の演者から、一晩を構成できる演者へ。この3年間が、その移行の期間にあたる。

そしてアメリカに戻った彼を待っていたのが、ハリー・ケラーからの指名だった。

1908年、看板を継ぐ

1908年、引退するケラーはサーストンを後継者として公に指名する。アメリカ最大の巡業ショーが、そのまま次の演者に手渡された。

指名されるということは、期待に応え続ける義務を負うということでもある。サーストンはそれを、以後20年以上にわたって果たした。

貨車8両という規模

サーストンのショーは、装置を運ぶのに貨車8両を要した。

舞台装置、衣装、動物、そして大勢のスタッフ。ひとつの町での公演を終えれば、すべてを積み込んで次の町へ移る。これは芸であると同時に、巨大な移動体でもあった。彼の仕事の半分は、この機構を回し続けることだったと言っていい。

マジックが娯楽産業の中心にあった時代の姿が、この数字に表れている。同時に、この規模を維持できたのがなぜ彼だけだったのかも見えてくる。演目の質だけでは足りず、それを毎晩どこかの町で成立させる経営能力が要ったのである。

フーディーニと並んで

同時代にはフーディーニがいた。脱出という一点で世界的な名声を得た男と、一晩の総合ショーで全米を制した男。二人の関係と競合は、後年の研究書の題材にもなっている。

派手な逸話ではフーディーニに及ばないかもしれない。だが「一晩を作り切る」という一点において、サーストンは頂点にいた。現代の大型ショーの原型は、この人の舞台にある。

1936年

サーストンは1936年4月13日、フロリダ州マイアミで没した。彼が回していたような規模の巡業ショーは、その後の時代には現れていない。

生まれ故郷のコロンバス市は、彼を市の名誉の殿堂に加えている。家出してサーカスに入った少年が、市の誇る名前になった。

代表的な演目・著作

  • 「カードの王(The King of Cards)」と呼ばれたカード演技
  • 貨車8両を要した全米巡業ショー

年表

確認できた年のみを記載しています。

  1. 1869 7月20日、オハイオ州コロンバスに生まれる
  2. 1904 一夜通しの公演を携えて世界巡業に出る(1907年まで)
  3. 1908 ハリー・ケラーから後継者として公に指名され、アメリカ最大の巡業ショーを引き継ぐ
  4. 1936 4月13日、フロリダ州マイアミにて死去

親子で観るときの注目ポイント

  • 大がかりな演目には、それを運び、組み立て、片づける人たちがいます。舞台裏の規模を想像してみてください
  • ショー全体の構成に注目を。どこで盛り上げ、どこで静かにするか。順番そのものが技術です
  • お子さんには「これを毎晩、違う町でやるとしたら?」と問いかけると、演者の大変さが伝わります
  • 小さな演目から始めて大きな舞台に行き着く人もいます。芸の幅がどう広がるかを想像してみてください

このサイトでは種明かしをしません

マジックのタネや仕掛けの解説は一切掲載していません。知らないまま驚けることこそが、この芸のいちばんの価値だと考えているからです。

公式リンク

  1. ブリタニカ百科事典(英語)
  2. コロンバス市 名誉の殿堂

出典

このページの生没年と実績は、以下の資料で確認しています。

  1. Howard Thurston | Illusionist, Showman & Entertainer Encyclopædia Britannica
  2. Howard Thurston Wikipedia(英語版)
  3. Howard Thurston コロンバス市公式サイト(名誉の殿堂)
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