石田天海
いしだ てんかい(本名 石田貞次郎)
天勝一座で渡米し、そのまま30年以上アメリカで生きた。海外に技法を残した最初の日本人。
- 生
- 1889-12-01
- 没
- 1972-06-06
- 国・拠点
- 日本/アメリカで30年以上活動
- 時代
- 技芸の洗練
日本人の名前がついた技法が、いまも世界中のマジシャンに使われている。「テンカイパーム」である。名づけの元になったのは、1924年に日本を発ち、そのまま30年以上アメリカで生きた一人の奇術師だった。
主な功績
- 愛知県名古屋市に生まれる。本名は石田貞次郎
- 1924年、松旭斎天勝一座のアメリカ巡業に加わり、そのまま現地に残った
- 1958年に帰国するまで30年以上、アメリカのショービジネスで活動を続けた
- テンカイパーム、テンカイ・アジャストメントジョグなど、いまも国際的に使われる技法を考案した
- 「時計の取り出し」「煙草の手順」を得意とした
- 1968年に第1回天海賞パーティーが開かれ、その名を冠した石田天海賞が後進を表彰する賞として続いている
名古屋から
天海は1889年12月1日、愛知県名古屋市に生まれた。本名は石田貞次郎という。
1922年に上京し、一時は松旭斎天洋一座に籍を置いた。その後、当時もっとも人気のあった松旭斎天勝一座に移る。
1924年、片道の旅
そして1924年、彼は天勝一座のアメリカ巡業に加わって渡米した。
ここで彼の人生が決まる。アメリカのショービジネスの速さと洗練に打たれた天海は、妻とともに現地に残ることを決めたのである。
一座は帰国し、彼は残った。日本での地位も、言葉の通じる環境も手放して、35歳で異国に留まった。1958年に帰国するまで、彼はアメリカのショービジネスの世界で30年以上を過ごすことになる。
技法に名を残す
天海がマジックの歴史に残っている理由は、大きな舞台の記録ではない。技法である。
彼が考案した「テンカイパーム」「テンカイ・アジャストメントジョグ」といった技法は、いまも国際的に使われ続けている。日本人の名前が技法の名称として世界の標準語彙に入った例は、他にほとんどない。
演目としては「時計の取り出し」「煙草の手順」を得意とした。いずれも至近距離の、手のなかで完結する種類の芸である。大掛かりな装置ではなく、手の技術で勝負した。 同時代のアメリカにはダイ・ヴァーノンがいた。天海はその世界で、日本から来た一人として通用したのである。
映像が残っていないこと
ここでひとつ、書いておくべきことがある。
天海の演技の映像は、ほとんど現存していない。 テレビ放送を撮影した8ミリフィルムと煙草の演技の記録がわずかに伝わるのみで、いずれも私蔵されており、一般に公開されているものではない。
30年以上アメリカの第一線で活動した演者の演技が、映像としてほぼ残っていない。マジックという芸が、いかに記録に残りにくいかを示す例である。だからこそ、彼が技法に残した名前の価値が際立つ。動きは消えたが、技法の名は残った。
帰国、そして天海賞
1958年、69歳で帰国した天海は、日本のマジック界に大きな影響を与えた。若き日の島田晴夫が彼から手の技術の指導を受けたことも伝えられている。
1968年、第1回天海賞パーティーが開かれた。彼の業績を讃え、後進を表彰する意味で創設されたのが石田天海賞である。この賞は現在も続いており、島田晴夫も受賞者の一人である。
天海は1972年6月6日に世を去った。
賞の名と、技法の名。彼は二つの形で名前を残した数少ない演者である。
代表的な演目・著作
- テンカイパーム — 国際的に使われ続けている技法
- テンカイ・アジャストメントジョグ
- 「時計の取り出し」「煙草の手順」
- 石田天海賞 — 後進を表彰する賞として現在も続いている
年表
確認できた年のみを記載しています。
- 1889 12月1日、愛知県名古屋市に生まれる
- 1922 上京し、一時は松旭斎天洋一座に入る
- 1924 松旭斎天勝一座のアメリカ巡業に加わり渡米。妻とともに現地への残留を決める
- 1958 30年以上のアメリカ生活を経て帰国する
- 1968 第1回天海賞パーティーが開かれる
- 1972 6月6日、死去
親子で観るときの注目ポイント
- 手のなかで起きる技法は、名前で呼ばれて世界に共有されます。誰かが考案し、誰かが受け継ぎます
- 至近距離の演技では、演者の指先を見ていてください。1ミリの差が結果を変えます
- お子さんには「日本の人の名前がついた技が、世界中で使われているんだよ」と伝えてみてください
このサイトでは種明かしをしません
マジックのタネや仕掛けの解説は一切掲載していません。知らないまま驚けることこそが、この芸のいちばんの価値だと考えているからです。
公式リンク
出典
このページの生没年と実績は、以下の資料で確認しています。
- 石田天海 コトバンク(日本大百科全書ほか)
- 石田天海 Wikipedia(日本語版)
- 石田天海研究(Study of Tenkai) マジックネットワーク7
- 石田天海(Tenkai) マジシャン紹介