🇨🇦 1947–2000

ダグ・ヘニング

Doug Henning

燕尾服を脱ぎ捨てた革命児。舞台奇術を70年代によみがえらせた。

生
1947-05-03
没
2000-02-07
国・拠点
カナダ
時代
テレビとショーの時代
ジャンル
イリュージョン ・ステージマジック

1970年代のはじめ、舞台マジックは古びた娯楽になりかけていた。それを引き戻したのがダグ・ヘニングである。彼がやったのは新しい演目の発明ではなく、演者の見え方そのものを取り替えることだった。

主な功績

  1. カナダ出身。ブロードウェイの舞台とテレビ特番でマジックを大衆娯楽の中心に戻した
  2. 燕尾服と気取った所作を捨て、明るく親しみやすい演者像を打ち出した
  3. 衰退していた舞台イリュージョンの人気を回復させ、次の世代への橋渡しをした

心理学を学んだマジシャン

ヘニングは1947年5月3日、カナダ・マニトバ州フォートギャリーに生まれた。ウィニペグで育った少年時代、彼はテレビの『エド・サリヴァン・ショー』で観た浮揚の演技に魅せられたという。

興味深いのは、彼が最初からマジックの道を一直線に進んだわけではないことである。彼はオンタリオ州のマクマスター大学で心理学を修めている。

そして卒業後、彼はカナダ政府から4,000ドルの助成金を得た。マジックを研究するための資金である。政府が奇術の研究に助成を出す。これ自体がかなり珍しい。

彼はこの資金と、自力で集めたさらに多くの資金を使って、『Spellbound』という舞台を作り上げた。主にトロントで上演されたこの公演が、彼の出発点になる。

危機の時代

1970年代のはじめ、舞台イリュージョンは勢いを失っていた。

黄金時代のスタイル、つまり燕尾服と厳めしい所作は、その時代の若い観客には古めかしく映った。演目の中身以前に、演者の佇まいが時代とずれていたのである。

装いを変える

ヘニングがしたのは、この佇まいを丸ごと入れ替えることだった。

燕尾服を着ない。気取らない。長い髪にカラフルな衣装で舞台に出て、うれしそうに演じる。

これは軽薄な変更ではない。マジシャンは「何かを知っている偉い人」でなくてもよい、という宣言だからだ。 観客と同じ側に立ち、一緒に驚く演者。この立ち位置は、その後のマジシャン像を大きく広げた。

心理学を学んだ人物が、観客の心の位置に注目したというのは、偶然ではないかもしれない。

1974年、ブロードウェイ

1974年5月、ヘニングはブロードウェイでミュージカル『The Magic Show』を開幕させる。翌1975年、彼はこの作品でトニー賞にノミネートされた。

マジシャンがブロードウェイのミュージカルで主演し、演劇賞の候補になる。これがどれほど例外的なことかは、前例を探せば分かる。

5,000万人

そして1975年12月、NBCで特番『Doug Henning’s World of Magic』が放送された。

視聴者は5,000万人を超えた。

劇場に来る人の数ではない。一夜で5,000万人が同じ演技を観たのである。衰退しかけていたジャンルに、これだけの観客が戻ってきた。

その後

後年のヘニングは、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーに師事し、超越瞑想の実践者となった。マジックの舞台から離れ、その活動に力を注いでいる。

彼は2000年2月7日、ロサンゼルスで世を去った。52歳だった。

彼が観客を呼び戻した1970年代に育った世代のなかから、次の時代のスターが現れる。デビッド・カッパーフィールドがテレビ特番を始めるのは1978年である。ヘニングが開けた扉を、次の演者が通っていった。

代表的な演目・著作

  • ブロードウェイ・ミュージカル『The Magic Show』(1974年)— トニー賞ノミネート
  • NBC特番『Doug Henning's World of Magic』(1975年〜)— 初回は5,000万人超が視聴した
  • 舞台『Spellbound』— トロントで上演した初期の自主公演

年表

確認できた年のみを記載しています。

  1. 1947 5月3日、カナダ・マニトバ州フォートギャリーに生まれる
  2. 1974 5月、ブロードウェイでミュージカル『The Magic Show』が開幕する
  3. 1975 『The Magic Show』でトニー賞にノミネートされる。12月、NBC特番『Doug Henning's World of Magic』が5,000万人を超える視聴者を集める
  4. 2000 2月7日、ロサンゼルスにて死去

親子で観るときの注目ポイント

  • 演者が楽しそうかどうかを見てください。演者の高揚は、客席に必ず伝わります
  • 堅苦しくない演出のほうが、実は難しいこともあります。自然に見せる工夫に注目を
  • お子さんと観るなら「このお兄さん、自分がいちばん楽しそうだね」と話すと、演技の温度が伝わります
  • 好きなことを仕事にするために、何を学ぶかは自由です。心理学から入った人もいます

このサイトでは種明かしをしません

マジックのタネや仕掛けの解説は一切掲載していません。知らないまま驚けることこそが、この芸のいちばんの価値だと考えているからです。

公式リンク

  1. ブリタニカ百科事典(英語)

出典

このページの生没年と実績は、以下の資料で確認しています。

  1. Doug Henning | Canadian magician Encyclopædia Britannica
  2. Doug Henning Wikipedia(英語版)
  3. Doug Henning | Biography EBSCO Research Starters
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