🇳🇱 1926–1980

フレッド・カップス

Fred Kaps(本名 Abraham Pieter Adrianus Bongers)

世界大会の最高賞を3度獲った、ただひとりのマジシャン。

生
1926
没
1980
国・拠点
オランダ
時代
技芸の洗練
ジャンル
マニピュレーション ・カードマジック ・ステージマジック

マジックの世界大会には FISM という舞台がある。その最高賞であるグランプリを3度受賞した演者は、歴史上ただ一人しかいない。オランダのフレッド・カップスである。そして彼の名は、まったく別の理由でも記憶されている。

公式チャンネルの演技

フレッド・カップスのカードマジック(エド・サリヴァン・ショー)
The Ed Sullivan Show(公式チャンネル) — この動画は公式チャンネルの埋め込みです。再生ボタンを押すとYouTubeに接続します。

主な功績

  1. FISM 世界大会のグランプリを1950年・1955年・1961年の3度受賞。これは史上唯一の記録である
  2. 1950年大会には「Mystica」の名で出場した
  3. 尽きることなく塩がこぼれ続ける演目や、絹のハンカチの色が変わる演目で広く知られた
  4. 洗練された立ち居振る舞いは、以後の舞台演技の手本とされた

三度の世界一

カップスは1926年、オランダに Abraham Pieter Adrianus Bongers として生まれた。

1950年、バルセロナで開かれた FISM 世界大会に「Mystica」の名で出場し、グランプリを獲得する。その後、1955年のアムステルダム大会、1961年のリエージュ大会でも同賞を受賞した。

FISM のグランプリを3度獲った演者は、彼のほかにいない。 ギネス世界記録もこの記録を認定している。

これは単なる回数の問題ではない。彼の演技が10年以上にわたって世界の頂点にあり続けたということである。同じ演者が、異なる時代の審査基準を三度くぐり抜けた。

何が評価されたのか

カップスが広く知られているのは、塩が尽きることなくこぼれ続ける演目や、絹のハンカチの色が変わる演目である。

いずれも派手な大仕掛けではない。舞台上の小さな出来事である。

にもかかわらず世界大会で最高賞を重ねたということは、審査されていたのが仕掛けの大きさではなく、演者としての完成度だったということだ。何を、どの速さで、どういう順番で見せるか。その配分の正しさが評価されたのである。

1964年2月9日

カップスの名は、マジック界の外でも語られることがある。ただしそれは、彼にとって不本意な理由によってである。

1964年2月9日、彼はアメリカの人気番組『エド・サリヴァン・ショー』に出演した。同じ回に出演していたのが、アメリカ初登場のビートルズだった。

この夜、スタジオと全米の茶の間は熱狂の渦にあった。そしてカップスは、その直後の出番だったのである。

芸能史において「最も演じにくかった出番」としてしばしば言及される一件である。世界大会を三度制した男が、自分の技術とは関係のない理由で不利な立場に置かれた。どんな名手にも、そういう夜がある。

規範になるということ

カップスの立ち居振る舞いは、以後の舞台演者にとっての手本とされてきた。

洗練された所作、余裕のある間合い、必要以上に動かない身体。彼が示したのは、うまいとはどういうことかを実演で定義するという仕事だった。後進はこれを参照点として自分の演技を測ることができた。

彼は1980年に世を去った。

記録が意味するもの

FISM のグランプリは毎回必ず出るわけではない。該当者なしとなる回もある。その賞を三度受け取った演者が、その後60年以上にわたって現れていない。

これは、彼がどれほど突出していたかを示す数字である。同時に、マジックという芸が、大きさや目新しさではなく完成度で測られうるということの証明でもある。

代表的な演目・著作

  • 尽きることなく塩がこぼれ続ける演目
  • 絹のハンカチの色が変わる演目
  • FISMグランプリ3度受賞(1950・1955・1961)

年表

確認できた年のみを記載しています。

  1. 1926 オランダに Abraham Pieter Adrianus Bongers として生まれる
  2. 1950 FISM世界大会(バルセロナ)で「Mystica」の名でグランプリを受賞
  3. 1955 FISM世界大会(アムステルダム)でグランプリを受賞
  4. 1961 FISM世界大会(リエージュ)でグランプリを受賞。3度目は史上唯一
  5. 1964 2月9日、『エド・サリヴァン・ショー』に出演。同じ回がビートルズのアメリカ初出演だった
  6. 1980 死去

親子で観るときの注目ポイント

  • 「うまい人」の定義を考えながら観てみてください。技術の難しさと、観ていて気持ちいいことは別ものです
  • 演者の余裕に注目を。カップスの系譜にある演者は、急いでいるように見えません
  • お子さんには「世界一を決める大会がある」と伝えると、マジックが競技でもあることが伝わります
  • どんな名手にも、思うようにいかない夜があります。それも仕事のうちだと考えてみてください

このサイトでは種明かしをしません

マジックのタネや仕掛けの解説は一切掲載していません。知らないまま驚けることこそが、この芸のいちばんの価値だと考えているからです。

公式リンク

  1. Magicpedia(英語)

出典

このページの生没年と実績は、以下の資料で確認しています。

  1. Fred Kaps Wikipedia(英語版)
  2. Fred Kaps Magicpedia(Genii Magazine)
  3. Most wins of the World Championship of Magic Grand Prix ギネス世界記録
  4. How the Beatles Spoiled Fred Kaps' Big Moment Travalanche
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